皆さんは胃カメラ検査(内視鏡)を受けたこと、介助についたことはありますか?
胃カメラ検査は検査前や検査中に色々決まり事があるのは知っていると思います。
けど、その理由や根拠が曖昧なままの人もいるのではないでしょうか。
この記事では
- 胃カメラ(内視鏡)検査の基本的なルール(左向きの理由)
- 必ず守らなければいけないルールとその根拠
- 看護のコツ
をまとめてみました!
私自身、患者として胃カメラ検査を受けた事があります。
内容を知っていても検査中は苦しくて「早く終われー!」と思っていたことを覚えています。
看護師の声かけや看護がとてもありがたかったです!
こんなの知らなかった!
というルールもあると思うので、最後まで読んでみてくださいね。
これを読めば、今さら聞けないと思っていた看護技術が明らかになりますよ。
胃カメラが左向きなのはなぜ?
胃カメラは必ず左向き(左側臥位)で行います。
理由は胃液が胃の底側にたまって食道へ逆流しないようにするためです。
これは基本中の基本ですね。
また、間違って右向きで行って胃液が逆流して気道に流れると、肺炎を起こすリスクが高齢者では特にあります。
絶対に間違えないようにしましょう。
そもそも胃カメラはなぜ行うの?
胃カメラを行う理由は、胃癌や潰瘍、胃炎の早期発見をできるからです。
バリウム検査でも異常を見つけることができますが、胃カメラには敵いません!
バリウムは病状が少し進行しないと発見できません。
一方、胃カメラは直接胃壁を確認できるので、少しの色調変化や異常がすぐわかります。
それに、バリウム検査で引っかかったら結局は精査のために胃カメラ検査をしないといけないので、最初から胃カメラ検査をした方が効率的ですね。
胃カメラ前の食事や水分はいつまでできる?
施設によって多少の差はありますが、午前中の検査の場合、食事は前日の夜9時までです。
繊維質のものは次の日まで胃内に残る場合があるので、消化の良い食事がおすすめです。
水分は検査当日も飲んで大丈夫です。
ただし、コーヒーやジュース、牛乳など色がついたものは検査に影響が出るため飲めません。
透明な水やスポーツドリンクは飲んでも大丈夫です。
内服薬は薬の種類や施設の方針で異なるのでその都度確認が必要です。
余談ですが、胃カメラが午後からの場合
- 食事は朝の8時まで
- 水分は昼の2時まで
とされています。
これも施設によって多少の差があります。
胃カメラの前処置はなんのため?
前処置は施設によって方法が多少異なりますが、共通で行われている処置とその理由を紹介していきますね。
胃内の洗浄
まず、タンパク分解酵素の薬を飲んでもらいます。
これは胃粘液の除去を目的としていて、胃壁を観察しやすくするためです。
咽頭麻酔
麻酔剤は8%リドカインスプレーであることが多いです。
添付文書によると、40mg(5回分のスプレー)で充分な効果が得られます。
具体的には左向き(左側臥位)でスプレーし、仰向け(仰臥位)で薬液を溜めてもらいます。
麻酔をする時は薬液が間違って気道に流れないように息を止めてもらうか、軽く声を出してもらいながら行います。
咽頭麻酔は
- カメラを入れる時にオエッとなる咽頭反射を抑えるため
- 違和感を軽減するため
です。
胃カメラの麻酔は全身麻酔?
局所麻酔です。
胃カメラ検査では意識消失(鎮静)と鎮痛まで場合によって行うことがあります。
全身麻酔はこの2つに加えて筋弛緩させますが、人工呼吸器が必要になります。
なので胃カメラの麻酔は全身麻酔ではありません。
胃カメラのときに声を出してもらう理由
カメラを入れる時に「いー」とか「えー」と声を出してもらうことがあります。
声を出すと梨状陥凹(りじょうかんおう)という部分が見えやすくなるためです。
ここは飲酒や喫煙によるダメージを受けやすく、カメラでしっかり観ることで下咽頭癌を早期に見つけることができます。
胃カメラのときに息を吸って止めてもらう理由
胃と食道のつなぎ目の部分(食道胃接合部)を観察したい時、息を吸って止めてもらうとそこが広がって観やすくなります。
胃カメラを楽に受けてもらうためのコツ
胃カメラを楽に受けるために看護師として何ができるでしょうか。
看護のコツをまとめてみました!
横向き
左に横向き(左側臥位)になってもらいますが、この時左足はまっすぐ伸ばして右足は左足の前に出します。
こうすることで横向きを楽に維持してもらうことができます。
最初のあごの位置とカメラ入れたあとのあごの位置
カメラを入れる時にあごは前に突き出してもらいます。
こうすると、咽頭が広がって観察しやすくなります。
また、咽頭が広がることでカメラの先端が咽頭壁に当たりにくくなり、オエッとなる咽頭反射を防ぐことができます。
カメラが食道まで進んだら、ゲップを防ぐために今度はあごを引いてもらいます。
力を抜いてもらう
力を抜いてリラックスしてもらうことで、カメラを入れやすくすることができます。
緊張して力が入ると喉から食道にかけてカメラが入りにくく、検査後に喉が痛くなってしまうケースがあります。
げっぷを我慢してもらう
胃内を観察する時は、カメラから送気(空気を送って)して胃を膨らませて行います。
胃にはヒダがあり、胃を膨らませることでヒダとヒダの間を隅々まで観ることができます。
ゲップをしてしまうと胃がペシャンコになってしまい、しっかりと観察することができません。
つばや胃液は垂れ流してもらう
この理由は、咽頭に麻酔をしているからです。
麻酔がかかっているため、飲み込もうとすると誤って気管の方に流れてしまうリスクがあります。
そうするとむせてしまい、苦しくなってしまいます。
胃カメラ後1時間で水を飲んでもらう理由
胃カメラが終わって1時間後に、一度お水を飲んでもらいます。
麻酔が切れる目安が1時間だからです。
水を飲んでみてムセが無いことを確認してから、食事をしてもらいます。
麻酔が残った状態で食事を摂ると、気管に入る可能性があり肺炎を起こしてしまいます。
胃カメラの麻酔のあとに運転ができない理由
運転が出来ないのは、鎮静剤を使った場合です。
30分から1時間は鎮静剤が切れるのを院内で待ちます。
それでもフラつきが残ったり、麻酔が切れたと思ってもまた眠くなったりすることがあるからです。
事故を起こす危険があるので運転はできません。
胃カメラのあとで連絡してもらわなきゃいけないときはどんなとき?
検査の後は大抵は何事もないですが、連絡をしてもらうべき場合があります。
貧血の症状があるとき
- ふらつく
- 胸がドキドキする(動悸がする)
- ボーッとして気が遠くなる感じがある
- 下まぶたが真っ白で血の気がない
このような症状は貧血の症状です。
出血の症状があるとき
- 吐血する(吐き気がある)
- 黒色便がでる
- 腹痛がある
このような症状は出血の症状です。
過去の看護師国試で出た問題
実際に過去の看護師国家試験で出た問題をご紹介します。
上部消化管内視鏡検査について適切なのはどれか。
1.2時間前から絶飲食とする。
2.前投薬には筋弛緩薬を用いる。
3.体位は左側臥位とする。
4.終了直後から飲食は可能である。
正解は 3
あなたは正解できましたか?
胃カメラが左向きなのはなぜ?今さら聞けない看護技術(内視鏡編)まとめ
胃カメラ検査中、特に気にしてもらいたい看護のコツは…
- 必ず左向きでうけること(胃液が食道に逆流するのを防ぐため)
- 水分補給は胃カメラ検査当日までできるが食事は調整する必要がある
- 胃カメラ前に処置が必要(胃内洗浄や咽頭麻酔のため)
- 胃カメラは局所麻酔
- 胃カメラのときは声を出してもらう(梨状陥凹が見えやすくなるため)
- 息を吸って止めてもらうのは観察しやすくなるため
- カメラを入れる時はアゴを突き出すこと(咽頭反射を防ぐため)
- カメラが食道まで進んだらアゴを引くこと(ゲップが出にくくするため)
- 力を抜いてリラックスしてもらう(検査後の喉の痛みを防ぐため)
- つばや胃液は垂れ流してもらう(飲み込むと誤嚥の危険があるため)
- 胃カメラ後1時間経てば水を飲んでもらう(麻酔が切れたか確認するため)
- 胃カメラ麻酔の後は運転できない(鎮静剤を使っているため)
- 胃カメラ後に貧血や出血の症状があればすぐ連絡してもらう
胃カメラ(内視鏡)検査は、胃の異常を早期発見するために行います。
大切なこと、頭に入れておくべき点が沢山ありますね。
しっかり勉強して安全に胃カメラを受けてもらいましょうね。