いまさら聞けない!新型コロナワクチンの筋肉注射手順と皮下注射との違い②

新型コロナウイルス感染症の終息に向け、世界各国ではワクチン接種が進んでいます。

日本でも、ようやくコロナワクチンの接種が開始されました。

多くの方が接種できるように、医者や看護師をはじめ、薬剤師、歯科医師、獣医師にまでワクチンを接種するように求められています。

このような状況の中で、

新型コロナワクチンのバイトしたいけど、筋肉注射って看護学生のとき以来ほとんどやってない…

インフルエンザの予防接種くらいしかやってない…

そもそも筋肉注射ってつまむんだっけ?

テレビでみるやり方が昔習ったやり方と違う気がする!

皮下注射との違いやワクチン特有のことも知りたい!

次々とこんな疑問がわきあがってくることはありませんか?

この記事のポイント

・いまさら聞けない筋肉注射の手順
・筋肉注射と皮下注射との違い

今回は、これからワクチン接種の仕事をしたいと思う看護師向けに現役派遣看護師として新型コロナワクチン接種リーダーのなすこが解説します!

ぜひ最後まで読んで、小さな疑問を残すことなく新型コロナワクチンの接種会場に向かいましょう。

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目次

いまさら聞けない新型コロナワクチンの筋肉注射手順と皮下注射との違いついてQ&A

新型コロナワクチンの筋肉注射手順と皮下注射との違いについて、多くの方が疑問に思う点をいくつかピックアップしました。

Q&Aにしてわかりやすく解説していきます。

Q1.そもそもなんで新型コロナワクチンは筋肉注射なの?皮下注射じゃない理由は?

A.筋肉注射の方が新型コロナウイルスに対して予防効果が得られるためです。

日本では、インフルエンザなどのワクチンを皮下注射ですることが多いです。

しかし、海外の多くの国ではワクチン接種は筋肉注射ですることがほとんどです。

では、なぜ皮下注射ではないのでしょうか?

ワクチン接種を筋肉注射で行う理由には大きく分けて2つあります。

  • 今回の新型コロナワクチンは海外で開発、臨床実験が行われており、筋肉注射(海外基準)による予防効果が実証されているため、確実な効果を得るために筋肉注射が推奨されています。
  • 筋肉注射と皮下注射によってにおこる免疫反応の違いです。
    筋肉内は皮下と異なり血流量が豊富であるため、少量の薬液でも効果があり、さらに抗原(ワクチン)が入ることにより免疫細胞が集まりやすいと言われています。
    そのため、皮下注射に比べ抗体化がつきやすいといった研究結果があります。
    また、筋肉注射の方が接種部位の反応(痛み、・腫れ)が少ないと言われています。

Q2.筋肉注射はつまむの?伸展させる?正しいのは伸展?

A.伸展させます。

学生の頃に、筋肉注射は接種部位をつまむと習った方が多いのではないでしょうか?

最近の看護学生の教科書にもつまむと書いてあります。

しかし、報道での接種状況や医師会や大学の筋肉注射の手順書には伸展させると書かれています

Q3.伸展させる理由は筋層にいれるため?

A.つまむことで皮下脂肪が厚くなり筋層まで届かない恐れがあるためです。

なので、筋肉注射をするときは皮膚を伸展させて筋層内に確実に薬剤が入るように注射しましょう。

Q4.筋肉がない高齢者にはどうしたらいい?

A.体格によって刺し方を工夫しましょう。

基本的には、垂直に20cmで穿刺するのが基準となっています。

しかし、極度に痩せ型の人もいるので骨に当たった場合は2〜3cmほど引き戻して注入しましょう!

Q5.正しく筋層に筋肉注射するための方法は?

A.垂直90度の角度れ20cmの深さで穿刺します。

最近の報道の映像の中で、角度をつけて穿刺する方が見受けられます。

これでは、筋層まで届かない可能性が出てきます。

そのため、確実に筋層内に薬液を入れるためには、垂直90度の角度れ20cmの深さで穿刺しましょう。

Q6.今回の新型コロナワクチンで使用する針の長さは?

A.今回のコロナワクチンで国から支給されている針(テルモ製)は25G針で針の長さは25cmです。

Q7.筋肉注射の部位は?

A.上腕と体幹が分かれる高さと肩峰中央から垂直の交点が刺入部位です。

教科書では、「肩峰から3横指下」と習った方が多いかと思われます。

しかし、「肩峰から3横指下」は腋下神経にあたる高さである可能性が高いので好ましくないと言われています。

正しい筋肉注射部位は上腕と体幹が分かれる高さ(脇のトップ)と肩峰中央から垂直の交点です。

Q8.筋肉注射をするときの患者さんの姿勢は?

A.背もたれのついた椅子に座り、上腕を垂直に下ろす姿勢で注射しましょう。

※皮下注射のとは異なり、手を腰に当てる(肩を内旋させる姿勢)はやめましょう。

誤って橈骨神経を穿刺する危険があります。

Q9.挿入角はいくつ?

A.皮膚を垂直として90度(直角)の角度で穿刺しましょう。

Q10.筋肉注射が禁忌なひとはどんな人?

A.易出血性疾患の人です。

基本的には、どの方でも問題ありません。

しかし、出血しやすい病気をお持ちの方は少し注意が必要です。

例えば、

  • 血友病
  • 血小板減少性紫斑病

などの易出血性疾患が筋肉注射が禁忌と言われています。

抗凝固薬を内服の方は注射した直後の圧迫時間を少し長くするようにしましょう。(Q14参照)

Q11.逆血の確認は必要?

A.必ずしも、逆血の確認は必要ありません。

理由としては、筋肉注射をする部位には静脈や動脈に穿刺する可能性が極めて低いからです。

もし、穿刺した瞬間に逆血があればすぐに抜き、穿刺部位を圧迫しましょう。

Q12.しびれがあるときはどう対応したらいい?

A.薬液は注入せずに、すぐに抜きましょう。

抜刺後にすぐに知覚感覚の確認を行い、医師に相談しましょう

Q13.筋肉注射のあとはもむの?

A.今回のコロナワクチンに関しては、穿刺部位を揉んだり、擦ったりしてはいけません

ワクチンの構造が壊れやすいため衝撃を与えないように注意しましょう。

Q14.抗凝固薬を内服している人のときの注意ポイントは?

A.抗凝固薬を内服の方は注射した直後の圧迫時間を少し長くするようにしましょう

2分〜5分程度が目安ですが、止血できてなければ、さらに数分は押さえておきましょう。

筋肉注射のときに押さえておきたいポイント

ここでは、厚生労働省のコロナワクチン接種マニュアルの動画を参考に、解説と痛みの少ない筋肉注射のやり方について述べていきます。

筋肉注射の手順

筋肉注射について(簡略)

(1)注射部位は上腕と体幹が分かれる高さ(脇のトップ)と肩峰中央から垂直の交点が刺入部位です。

(2)三角筋をつままず、広げて圧迫固定します。
皮下組織が手繰られて厚くなりますと、針先が三角筋に届かなくなります。

(3)注射針を皮膚に対して斜めに刺入している報道が見受けられますが、注射針は必ず直角に刺入してください。

(4)刺入れの深さは体型により13mm~20mmが目安です。

(5)シリンジ陰圧確認を行わないことで、筋肉組織損傷による免疫獲得減弱を回避します。

(6)神経損傷を避けるため、刺入時に異常の訴えが無いことを確認した後にワクチンを三角筋に注入します。

抜針後は軽く圧迫するだけで大丈夫です。

揉まないでください。

痛みの少ない筋肉注射のやり方

筋肉注射は皮下注射より痛みを感じやすい侵襲行為です。

そのため、できるだけ患者さんに安心して摂取できるようなコツを知っておくと、ワクチン接種をうまく行うことができます。

これは、痛みの専門医である神経内科の医師から伝授してもらった技なので是非活用してください!

POINT!!

注射(穿刺)をする前に、穿刺部位をアルコール消毒をしながら強く圧迫します。

そうすることで、穿刺部位の皮膚感覚が多少麻痺します。

その間に穿刺することで痛みを軽減することができます。

また、穿刺する時に素早く刺すことが重要です。

痛みの神経は皮膚の表面と筋層の表面にあるため、できるだけ早く穿刺し痛みを感じにくい筋層へ針を届けさせることがポイントとなっています。

いまさら聞けない!新型コロナワクチンの筋肉注射手順と皮下注射との違いまとめ

  • 新型コロナワクチンが筋肉注射なのは予防効果が高いため
  • 筋肉注射は伸展させる
  • 被接種者の体格によって刺し方を工夫する
  • 垂直90度の角度れ20cmの深さで刺す
  • ワクチン接種で使用する針は25G針で針の長さは25cm
  • 上腕と体幹が分かれる高さと肩峰中央から垂直の交点が刺入部位
  • 被接種者には腕を垂直に下ろす姿勢になってもらう
  • 筋肉注射が禁忌なのは易出血性疾患の人
  • 逆血の確認は不要
  • 被接種者にしびれがあればすぐに抜き医師に相談
  • 筋肉注射の後は揉まない
  • 抗凝固薬を内服の人は注射直後の圧迫時間を少し長くする
  • 注射前に強く圧迫し素早く刺すと痛みを感じにくくなる

これまでの解説で、今までに習った筋肉注射とやり方が違うと感じた方が多いかと思われます。

看護技術に限らず医療は日々進化しています。

常に最新の知識を身につけることは医療の専門職としての義務であります。

今回のQ&Aの内容や筋肉注射のポイントが、これからコロナワクチン接種の仕事をしたいと考えている看護師さんの力になることを願っています。

多くの患者さんは注射に対して緊張しますし、不安を感じます。

そんな時に看護師さんの優しい声かけや気配りが患者さんの痛みや恐怖を和らげることができます。

これまで解説した手技も大切ですが、1番重要なことは看護師さん気配りです。

まだまだ、新型コロナ感染症の脅威がなくなることは難しいかも知れません。

多くの医療従者やワクチンに関わる職種の方に感謝し、早く普通の日常に戻れるといいですね。

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