新型コロナワクチンのバイトしたいけど、筋肉注射って看護学生のとき以来ほとんどやってない…
インフルエンザの予防接種くらいしかやってない…
筋肉注射ってつまむの?
皮下注射との違いやワクチン特有のことも知りたい!
筋肉注射って、意外と看護師が実施することが少ない手技ですよね。
今回新型コロナウィルスのワクチン接種が始まりましたが、筋肉注射の手順も新しく変わっていますし、普段はあまり筋注なんてしないから不安ですよね。
この記事のポイント
・新型コロナワクチンの筋肉注射のやり方
・筋肉注射と皮下注射の違い
現役派遣看護師として毎日100人以上に筋肉注射を行う新型コロナワクチン接種リーダーのなすこが解説します!
筋肉注射の手技はもちろん、根拠もあわせて学習できるので、不安なく筋肉注射を行えるようになります!!
コロナの予防接種のスタッフに立候補したいけど、経験がなくて心配…
という方も安心です。
一緒に勉強して、自信をもって業務に取り組みましょう!!
そもそもなんで新型コロナワクチンは筋肉注射なの?皮下注射じゃない理由は?
少ない量の薬液でも確実に投与できるものが筋肉注射だからです。
また、筋肉注射は他の注射と比較して痛みや腫れなどの症状が出にくいと言われています。
新型コロナウィルス特有の条件として、「m-RNAワクチン」ということもあります。
筋肉注射はつまむの?伸展させる?正しいのは伸展!
筋肉注射は伸展させるのが正しい理由と、正しく筋層に注射する方法をご説明します。
伸展させる理由は筋層にいれるため
つまんでしまうと皮下注射になってしまうので、皮膚を伸展させるようにしましょう。
筋肉がない高齢者にはどうしたらいい?
針を刺したあとに骨にあたるようであれば数ミリひいて注射します。
痩せているかたには
- あらかじめ短い針を使用したり
- ゆっくり針をさして骨に当たったときに早急に対処できるように
する必要があります。
正しく筋層に筋肉注射するための方法
使用する針の長さ
- 針の長さは基本的に25mm
- やせて三角筋が薄い人は16~19mmも可能
- 高度肥満の人は38mmも可能
筋肉注射の部位
三角筋(前・後腋窩線の頂点同士を結ぶ線と肩峰からおろした線を結んだ箇所が安全だと言われています)です。
三角筋の高い位置は合併症のリスクがあります。
- 肩峰から3cm以内だとSIRVA(肩関節障害)のリスク
- 4~9cm以内だと腋窩神経障害のリスク
があるため、注意が必要です。
筋肉注射をするときの患者さんの姿勢
被接種者は腰かけてもらいます。
手を腰にあてる必要はありません。
手を腰にあてることで、橈骨神経障害のリスクが高くなります。
挿入角度
針は垂直に刺します。
筋肉注射の手順(動画付き)
YouTube 千葉大学病院公式チャンネルより
- 椅子に座ってもらい左右どちらかの三角筋部を露出
(副反応で痛みが出たときのことを考え、利き手と反対にさすことが多いです。)
- 袖は肩上まであげしっかり肩峰が確認できるように
(結構長袖を着てきている人が多くいます…。)
- 手は腰にあてず自然にさげてもらう
(手を腰にあてると橈骨神経の損傷リスクが高まります。)
- 注射する部位を決める
(前・後腋窩線の頂点同士を結ぶ線と肩峰からおろした線を結んだ箇所が安全だと言われています。)
- 上腕三角筋の中央に穿刺するイメージで
- 刺入部位をアルコールで消毒
(事前にアルコールが使用できるか確認し、過敏症のある被接種者にはアルコールフリーの消毒を使用します。)
- 針は皮膚に対して垂直にさす(90度)
- 穿刺後は痛みやしびれがないかを確認
- 接種完了
筋肉注射のときに注意しておきたいポイント
筋肉注射のときに注意したいポイントをいくつかご紹介します。
筋肉注射が禁忌なひとはどんな人?
進行性骨化性線維異形成症のある児童への接種は禁忌となっています。
また、
- 37.5度以上の発熱がある人や重い急性疾患にかかっている人
- ワクチンの成分(ポリエチレングリコールなど)に対し、重度の過敏症の既往歴のある人
も接種を受けることができません。
逆血の確認は必要?
逆血の確認は不要といわれています。
私の学生時代は必ず逆血の確認をするように習いましたが、ワクチン接種をする三角筋などは、大きな血管がないため、逆血の確認は必要ありません。
また、逆血の確認をする際シリンジを引くと痛みを伴うため、逆血確認のメリットはほとんどないといわれています。
しびれがあるときはどう対応したらいい?
しびれがあるときには神経を損傷した可能性があるため、早急に針を抜針します。
筋肉注射のあとはもむの?
筋肉注射を接種したあとはもみません。
抗凝固薬を内服している人のときの注意ポイントは?
注射を受ける人の中には、抗凝固薬を内服している人もたくさんいます。
必ず注射の前に問診があるので、その際内服薬の確認や既往の確認をし、出血しやすいと判断された人には、適切な対処をしなければなりません。
例えば、
- 注射の針を他のひとより細いものを使用したり、
- 注射後に2分程度圧迫してもらい血腫ができるのを予防する
といった対策があります。
筋肉注射と皮下注射の違い
筋肉注射のほうが、皮下注射と比較して、痛みや腫れが少ないといわれています。
実は筋肉組織は、痛みを感じる神経が少なく、鈍感であるからです。
また、ワクチンの種類によっては、皮下注射のほうが強い炎症や肉芽などの不快な症状が出やすいといわれています。
同じワクチンでもインフルは皮下注射で新型コロナは筋肉内注射の理由
新型コロナウィルス特有の条件として、「m-RNAワクチン」ということもあります。
筋肉は血流が豊富な組織です。
免疫細胞が多数存在するので、筋肉に注射することによって、m-RNAワクチンの成分を免疫細胞が発見しやすくなり、免疫の活性化につながりやすくなると考えられています。
ちなみに、日本では皮下注射でワクチンを接種することが主流ですが、海外ではほとんどの国が筋肉注射でワクチンを接種しているそうです。
いまさら聞けない!新型コロナワクチンの筋肉注射手順と皮下注射との違いのまとめ
- 筋肉注射は皮膚を伸展させる
- 基本は25mmの針を使用する(体格により変更もあり)
- 注射する位置は前・後腋窩線の頂点同士を結んだ線と肩峰からおろした線を結んだ箇所
- 逆血の確認は必要なし
- しびれがあるときは早急に針を抜く
- やせているひとに注射するときは骨にあたる可能性があるため、あらかじめ短い針を使ったり、骨にあたったら数ミリ針をひいて薬液をいれる
- 筋肉注射をしたあとはもまない
- 出血傾向のあるひとには細い針を使用したり、注射後2分間圧迫してもらう
- 針は垂直にさす
- 被接種者は腕をだらりとおろした姿勢になってもらう
- 37.5度以上の発熱がある人や重い急性疾患にかかっている人、ワクチンの成分(ポリエチレングリコールなど)に対し、重度の過敏症の既往歴のある人は接種できない
以上が新型コロナワクチンの筋肉注射のやり方と皮下注射との違いです。
筋肉注射は普段なかなか出会うことがない手技で、不安を覚えることが多いと思います。
でも、しっかり根拠を学んで行えば、怖いことはありません。
数をこなして慣れてしまえば、「どうしてあんなに不安だったんだろう」という気持ちになってきますよ。
自信をもって業務に取り組みましょう!!