大学病院の看護師は使えないと言われる理由とICUナースが教えるできるナースになるコツ

大学病院の看護師ってよく「使えない」って言われているるけど、実際はどうなんだろう?

大学病院10年目ICUナース

大学病院のICUで10年目になる看護師です。本日は皆さんが気になる
大学病院看護師の実際についてお伝えします!!

現在私は大学病院のICUで勤務して10年目になりました。たまに外病院から転職した看護師さんや医師から

「大学病院の看護師さんだしねー」「え、今までいた●●病院の看護師さんはやってくれたのにやってくれないの?」

と言われることはしょっちゅうあります。

“大学病院看護師=使えない”と世間からは思われているのでしょうけれど、実際はどうなのでしょうか?

今回は私の経験をもとにお話ししていきたいと思います。

目次

大学病院の看護師は使えないと言われる理由①採血やルート確保をする機会が少ない

これ、嘘です。採血やルート確保しなくていいとかどんなデマでしょう…。

採血やルート確保はきちんと看護師の業務として手順書もあり日常茶飯事の業務です。ただ、先輩に聞くと昔は採血やルート確保は研修医のステップアップ業務としてやっていたそうなのです。またテレビドラマの白い巨塔のような教授回診が行われていたころは、研修医や医局の中でも末端の医師らがプレゼンをするために、朝早くに採血データを出せるようにと患者さんがまだ休んでいるにもかかわらず夜更けから作業していた時代もあるとドクターから聞きました。

ですが、現在は医師不足と働き方改革が叫ばれる時代です。正直研修医にそんなこと押し付けていたらブラック病院として入局希望者が減ってしまいます…よね?大学病院の看護師だって採血もするし、ルートキープだってやらなきゃ業務が終わりません。

しかし!私が勤務している病院ではルートキープについてはIVナースというライセンスがないと実施してはいけない規定があります。これは知識と技術について決められている単位数の講義を受けると受験資格を得て、筆記試験と実技試験に合格した人のみ患者さんに技術提供できるようになるというものです。自動車の運転免許みたいなものです。

大学病院ではケモや輸血、造影剤使用の検査が日常茶飯事でしたので、ラインが漏れると血管の損傷や壊死につながり患者さんへ不利益を生じることになります。また近年では点滴漏れのアクシデントで訴訟問題に発展することもありました。ですから安全で質の高い看護を提供するためにIVナースのライセンス制度で担保としているんですね。

また採血においても、大学病院は頻回に行われます。重篤な疾患や術後合併症、薬剤の治験なんかも頻繁に行われているので1日に3回以上採血するという患者さんも中にはいます。特に人工心肺装置をつけている人や臓器移植後の人は1回に8本なんてことも。(血算、生化、凝固以外は正直●●ペプチドとか言われてもよくわかりません…笑)

むしろ私は大学病院こそ採血やルートキープをする機会が多いと思っています。

10年目大学病院ICU看護師

もちろん全身浮腫や肥満、小児など、どうしてもナースでは血管確保が難しい場合には医師も手伝ってくれます!医師が常駐しているので依頼はしやすいですね

大学病院の看護師は使えないと言われる理由②最初の入職先の人が多いので他の病院を知らず常識が違う

私を始め、新卒で大学病院を就職先に選ぶ人は多いと思います。都内の大学病院ですが、私の入職時は同僚が200人程度でした。正直卒後すぐの状態では、大学病院であれ民間病院であれ、通ってきた道は同じ看護師国家試験であり看護師免許を持つ以上はある程度の知識と技術は学生時代に身につけていますから大した差はありません

大学病院から民間病院に転職したり、民間病院から大学病院に移動することでそれなりにお互いがギャップを感じる場面もあるでしょうが、それは日本の医療が棲み分けをしている以上仕方ないと思っています。

そして大学病院ではマニュアル化がしっかりされているため、看護師がライセンスを取得していないと提供してはいけないと規定されている技術も数多くあります。ルールとして決められている以上、どんなに医師に頼まれても提供することはできません。

民間病院ではルールがあいまいであったり、医師が少ないので看護師が業務を請け負うこともあるそうです。

そもそも比較したところで、競争し合っているわけではないので患者さんにとって質のよい看護を提供できるならばスタートがどこであれ関係ないと言うのが本音です。

大学病院の看護師は使えないと言われる理由③自分で考えず、医師に報告するだけで指示待ちだから

10年目大学病院ICU看護師

民間病院で働いている友達に「大学病院の看護師は医者が多くてやること少なくていいね」って言われたけど、本当にそうなのかな?

これもあるあるだと思いますが、きっと私を始め大学病院に勤務する看護師はイラッとすることでしょう。

大学病院の役割について、厚生労働省では大学病院に期待されるものについて以下のように書かれています。

1  教育・研修について

  本懇談会の第1次報告で提言したように、医療人育成における実習の飛躍的な充実が求められており、大学病院の本来の設置目的である医師・歯科医師の実習の内容的な充実を図るとともに、看護婦(士)、保健婦(士)、助産婦、薬剤師、臨床放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士等のコ・メディカル・スタッフの実習についても、地域の医療機関等とも連携を図りつつ受入れの要請に応える必要がある。

  卒後の研修については、特に医師・歯科医師について、その充実が進められているが、病院全体としての実施体制づくり、関係施設との連携を含めたプログラムの整備を一層進める必要がある。

  さらに、医療人の生涯学習についてもその機会と内容を充実すべきである。

2  研究について

  高度医療の推進に対する国民的期待に応え、難治性疾患の原因解明や新しい診断・治療方法の開発等を一層進めるべきである。また、既存の診断・治療方法について科学性、有効性について検証する研究も重視すべきである。

  大学病院においては、製薬企業からの委託を受けて医薬品や医療用具の臨床試験(いわゆる治験)が研究の一環として行われている。これは新しい治療法の進展をもたらし医療や医学の発展に大きく貢献するものであり、高度技術の開発の役割を担う大学病院においてその社会的使命のひとつとして実施していく必要があるものである。また、質の高い治験を倫理的、科学的に適正に実施していくためにも施設と人員の整った大学病院がふさわしい。大学病院はこのような責務を認識し、近時整備された基準に従って適正な体制を整え、その実施にあたる必要がある。

3  医療について

  地域医療の中核的機関として高度医療の提供に引き続き努めるとともに、研究成果を還元して先端的医療を導入していく必要がある。医療の提供に当たっては、患者本位の立場を再確認するとともに、患者のQOLを重視することとし、そのための体制を整えるべきである。

  地域医療への一層の貢献の観点からは、地域の医療機関との連携の推進や救急医療体制、災害時の対応体制の充実が求められる。

出典:厚生労働省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/009/toushin/970701.htm#01

大学病院では、診療だけではなく教育や研修、そして研究を日々行っています。そして入院患者さんは急性期の患者さんがほとんどで、しかも難病指定されている疾患や、複雑な先天性の奇形、合併症などを抱えた人が多いです。自分で考えずに医師の指示待ちというのは大きな間違いで、少しの変化でも命に直結する人が多いためまずは“報告”という義務を果たしていると言っても過言ではありません。

さらに、日々医師が専門医を取るためであったり学会報告をするために臨床で研究をするだけでなく、治験も頻繁に行われているため、研究データを正確に取るために医師へ報告と同時に看護師がデータ化しなくてはならないことも多いんです。

またあるときには操作画面がすべて英語になっている最新鋭の医療機器を取り付けている患者さんもいます。そんな時は、患者さんの安全を守るためにも慣れない医療機器を自分達では扱わず医師に報告して大人しく指示を待ちます。

10年目大学病院ICU看護師

指示を待っているだけなんて楽そうって思うかもしれないけど、治療が複雑だからこそ細かいことも確認をしているだけで、実際は報告して指示を待つということほど面倒臭い業務はないと思っています

ICUナース直伝!大学病院の看護師が使えるナースになるコツ

私は複数個所院内ローテーションもしましたが、10年間大学病院のICUで看護師をしてきました。自分自身を過大評価するつもりはありませんが、プリセプターやリーダー、チーフというポジションを経て今春には大学院への進学が決まっています。私の考える使えるナースの定義ですが

  • 医師の指示に従って医療を患者さんに提供できる
  • 患者さんの利益を追求できる
  • チーム医療として周りと協調して業務を遂行できる
  • 気分にムラがなく平常心で業務をこなせる
  • できないことや自身がないことを口に出せる

と考えています。この点を踏まえてどうすれば大学病院で通用するナースになれるのかお伝えできればと思います。

積極的に勉強会への参加と手技の実践を行う

手技については大学病院は教育機関としての側面もあるため、大学施設と連携してスキルアップ研修を開催したりライセンス制度を取り入れたりしています。勉強会は部署レベルのものから院内共通レベルのものまで幅広く、医師による講義やCEや検査技師、時には管理栄養士など他職種を講師とした研修も数多く開催されます。まずは知識や見聞を広めるために積極的に勉強会へ参加し、スキルアップを目指して実技の練習を行うことが重要です。習うより慣れろと言う言葉もありますが、身についた技術はそう簡単には忘れません。

私はICU勤務なので、呼吸状態が悪化したり院内急変などで心肺蘇生なども日常茶飯事と言っても過言ではなく常に挿管・抜管、CVC挿入介助などは隣り合わせでどんな状況でも平常心で行うことができます。

でも最初から完璧だったわけではありません。毎日トレーニングキッドやシミュレーションを繰り返し、ライセンス試験に合格することで身につけたのです。せっかく身につけた知識やスキルも使わなければ風化していくので、定期的にシミュレーションや知識のアップデートも必要です。

アセスメントをしたうえで報告する

これは1,2年目に多い失敗例なのではないかと思います。よく「ドレーンの量がなんか多いんですけど…」と言われることがあります。【ドレーンの排液量が多い】のは事実であって、これでは「だからどうしたの?」ってなりますよね。

アセスメントをしたうえで報告ってどういうこと??

10年目大学病院ICU看護師

ドレーンの排液量が多いだけでは問題ではありません。留置されている場所によっては多いことも。私ならこんな風に報告します。

では【ドレーン排液量は●mL/hですが、もともと抗凝固をしていて出血傾向がある患者さんです。排液の性状は淡々血清で、血圧も●/●mmHgで術後と比較して下がっていませんしドレーン刺入部に血腫や圧痛を認める部分はありません。排液量が増える少し前に体位変換をしたので、その影響もあるかと思っています。もう少し経過観察でいいでしょうか?】

事実の報告も大切ですが、時系列やその患者さんの個別性、自分の考えなどを報告してみて医師から「経過観察」か「対応について」の指示をもらうのです。

ミニドクターになっていませんか?

あくまでも看護師の業務は“医師の診療の補助業務”です。たまにミニドクターとなって、看護師の経験と知識から報告をせず“経過観察”としてしまう人もいますが、報告・連絡・相談は大切なことです。ドクターコール範囲を逸脱していた場合は必ず医師への報告を行い指示をもらいましょう!

専門分野でそれぞれの能力を発揮するからこそのチーム医療を

大学病院の良さは、各診療科やコメディカがそれぞれ研究と教育を兼ね備えていることでマンパワーが充実しているという点です。それぞれが能力を発揮すれば患者さんへ最大限の医療を提供することができます。しかしより良い医療を提供するためのチーム医療ではお互いが努力する必要があり、また患者さんへの問題解決に対して足並みを揃えなくてはいけません。同職者だけではなく他職者に対して協調性をもって接することが重要です。

さらに、できないことはできないと言うことが大切です。医療機器の扱い方に不安があればCEさんへ勉強会を開いてもらえばいいですし、疾患が複雑で難しい場合は医師へ教えてもらうのも立派な看護師としての責務です。

使えるか使えないかを判断するのは、医師や先輩看護師ではありません。あくまでも患者さんです。

もちろん技術力が低い場合には磨く努力が必要ですが、できないことをできるように見せかけて安請け合いすることは、患者さんを危険に晒すリスクがありますから絶対にやめましょう。

大学病院の看護師にはメリットもたくさんある!

使えないと言われやすい大学病院の看護師にはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここからは私が考える、大学病院看護師のメリットについてご紹介していきます。

大学病院の看護師のメリット①研修や勉強会が無料

大学病院では教育機関ということもあり、研修や勉強会が無料で開催されています。大学から教員を招いて研修を開いてもらうだけではなく、専門看護師や認定看護師が多く所属しているためスキルアップにつながる勉強会もしょっちゅう開催されます。さらに大学で行われている講義についても講義によっては一般聴講が認められ、教授の講義を直接受けることもできるんですよ。

もちろん各診療科で先輩から後輩に対する勉強会も開かれますが、講師は医師だけでなく薬剤師やCEなども多く在籍していますから質の高い研修や勉強会が無料というのは嬉しいですよね。

10年目大学病院ICU看護師

他にも看護学部の図書館を利用できたり、ちょっとわからない部分はハードルが低い研修医の先生に教えてもらうこともできます。
医師が駐在している分距離が近くてすぐに聞けると言うのは、質問を後回しにしなくていいのですぐに解決できてありがたいです!

大学病院の看護師のメリット②給料やボーナス、福利厚生が充実している

給料やボーナス、福利厚生が充実していると言われますが、これは大学病院には国からの研究費用などが補助され経営が安定しているからだと先輩に言われました。利益や実績が直接経営に関わる民間病院とは違い研究と称して、診療報酬として計上できず病院持ち出しでも、救命のために輸血をバンバン投与することも。

福利厚生は大学と共同して大学敷地内の施設を使ったサークル活動や格安のトレーニングジムを導入していたり、最近ではおしゃれなカフェや飲食店を院内に併設している病院も増えました。

さらに大学病院で勤務する看護師に対して就学支援もしている病院も多く、働きながらでも学習環境が整うというメリットがあります。

10年目大学病院ICU看護師

他にも1台数千万円するような医療機器の導入や最新鋭の機器を導入した手術を見学することもできます。治療のアップデートも常日頃行われるので覚えることは大変ですが、とてもいい刺激になりますよ!

大学病院の看護師のメリット③専門性が高い看護を学べる

大学病院には稀な疾患をはじめとして様々な疾患の患者が集まります。普段民間病院で取り扱うような簡単な手術だとしても、術後の管理が重要な既往歴や合併症を持ったハイリスク患者のオペを行うことも多いため、より専門性が高い看護を学ぶことができます。さらに専門看護師や認定看護師が数多く活躍しているのも専門性が高くスペシャリストが育成しやすい環境だからだと思っています。

大学病院の看護師は使えないと言われる理由とICUナースが教えるできるナースになるコツ:まとめ

私は大学病院の看護師は使えないのではなく、必要とされている看護師の業務の質の差だと考えています。私は民間病院では看護師としての従事経験がありませんが、大学病院のICU経験年数10年ナースは正直使えないと言われるナースではないと胸を張って言うつもりです。

短時間にどれだけたくさんの採血ができても、年間のルート確保数が多かったとしても私たちが日ごろ向き合っていかなくてはいけないのは患者さん自身と看護問題についてです。決して技術の提供数を競っているわけでも患者単価を上げる営業をしているわけでもありません。大切なことはどれだけ患者さんに寄り添った看護を提供できるかであって、そのために必要な技術力であったり知識を身につけていくので、置かれた環境下で質の高い看護が提供できれば何ら問題はないのです。

大学病院看護師だから使えない…と卑下せずに、自分の強みを活かした看護を提供できるよう日々努力を重ねて、お互い頑張っていきましょうね!

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