管理職と聞くとキャリアアップする上で目指す目標になる役職ですよね。
また、自身でステーションを開設してこれから管理職になる方もいるでしょう。
では訪問看護の管理職はどのようなものなのでしょうか。
今回は
- 訪問看護の管理職の年収はどのくらいなのか
- 管理職になるための必要な資格や資質は何か
- 管理職の仕事内容、注意点
について、現役訪問看護師が説明します。
ぜひ、これからのキャリアを考えるときの参考にしてみてくださいね。
訪問看護師の管理者の年収はどれくらい?

訪問看護の管理者や所長と言われる立場の方はどのぐらい給料をもらっているのでしょうか。
実際の数字を確認するのは難しく、各事業所によって異なってきます。
管理者の方は、基本給に加えてオンコール手当てやその他福利厚生でもらえる手当てを含めての給料になります。
管理者の給料=基本給+管理者手当+その他の手当て
スタッフと違うのは「管理者手当て」というものがいくら付くのかで変動しますね。
現役訪問看護師の私が勤めている事業所では、管理職手当てが1万円です。
安いと思われるかもしれませんが、正直、請求業務と訪問の調整程度しかありません。
しかし中には
- 請求業務や報告書の作成
- スタッフのシフト管理
- 新規依頼の契約
など管理業務を全て行なっている管理者の方は多いです。
そのような方は1万円では少ないでしょう。
そのため、年収で換算すると
1万円×12ヶ月(+ボーナス査定追加分)=12万円+α以上
となります。
大体、20万円ほど現在の自分の年収よりアップすると考えても良いでしょう。
また、他の事業所で管理者を長年経験して、「新しいステーションの管理者になってほしい」と依頼された場合にはさらに高くなることでしょう。
訪問看護師の管理者になるために必要な資質や資格は何が必要?

訪問看護師の管理者になるために必要な資質や資格について紹介していきますね。
必要な資格
訪問看護ステーションで管理者をするために必要な資格は「正看護師」または「保健師」であることだけです。
特に必要な研修はありませんし、経験年数も法的には記載されていません。
ただ、要件としては
専従かつ常勤の保健師または看護師であって、適切な指定訪問看護を行うために必要な知識及び技能を有する者
医療機関における看護、訪問看護または老人保健法第19条の訪問指導の業務に従事した経験のある者
厚生労働省;指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について(令和2年3月5日保発第305004号)より引用
となっています。
まとめると
- 看護師または保健師の有資格者か
- 過去に病院などで看護師として勤務していたか訪問看護を経験しているか
- 家庭において寝たきりの状態かそれに近い状態の方の自宅に保健指導を行った経験があるか
となります。
必要な資質
訪問看護の管理者はいわゆる「リーダー」という存在になります。
病棟でいう「主任」「師長」レベルのスキルが求められることもあります。
訪問看護の管理者に求められるスキル(資質)としては、以下のようなことが提唱されています。
- 全ての分野(人、物、金、情報、時間など)に関して管理できる
- 財務関係に精通している
- 看護ケアに対して柔軟に考えられる
- 新しいアイデアを実現する創造性がある
- 看護ケアに関するミスを正確に報告できる
- 自身の事業所を向上したい思いがある
これら全てがないと管理者になれないというわけではありません。
管理者についてから成長していくことがほとんどです。
しかし、選考するにあたって上層部が考慮するのは上記のことでしょう。

もし自身で訪問看護ステーションを立ち上げて、自身が管理者になる場合には上記のことを念頭に成長していければ良いです。
管理者の資質は自身で律して作り上げていくものです。
スタッフの時代から真摯に看護と向き合い、自身の看護する環境を良くしようと懸命に働いて学んでいけば自ずと身についてきます。
訪問看護師の管理者の仕事内容とは?

管理者の仕事はその名の通り「管理」です。
- スタッフの管理
- 利用者(訪問時間)の管理
- 財務管理
- 物品管理
- 外部との連絡調整
などがあります。
では一つずつ見ていきましょう。
スタッフの管理
これはどこの管理者でも行う業務ですよね。
スタッフがいなければ経営はできません。
そのため、スタッフのシフトや体調、精神面での管理も管理職の仕事です。
適切な勤務体制が組まれていないと、訪問調整もできませんし、最悪な場合には労働基準法に抵触してしまいます。
しっかり労働基準法を読み込み、勤怠管理をしていきましょう。
そしてスタッフは機械ではありません。
みんなそれぞれが「心」と「生活」を持っています。
- スタッフの精神的な苦しみをしっかりと聞き取る姿勢を見せる
- スタッフの生活が破綻しないよう、家族のことも考える
ように管理していきましょう。
また、必要な研修などを行い、育てていくこともステーションの看護力を底上げするためには必要です。
利用者(訪問時間)の管理
スタッフがバリバリ働いてくれても、効率が悪い訪問調整だと経営が難しくなってきます。
前項でも述べたように、スタッフの生活も守る必要があります。
そのためにはしっかり利益を上げることも考えていきましょう。
訪問看護は決められた値段しか報酬が発生しません。
そのため、しっかりと訪問件数を伸ばしていかなくてはなりませんので、ここは欠かせないところになるでしょう。
また、利用者自身の管理も忘れてはなりません。
管理者専任であれば、訪問には出ません。
顔も契約時に一度見たのみということもあります。
しかし、実際に何かあったときに「何も知りませんでした」ではすみません。

スタッフからの報告や記録に目を通し、利用者のことを把握しておきましょう。
財務管理
経営していく中では財務の管理も必要になってきます。
ほとんどの事業所では事務の方が計算や管理をされています。
しかし管理者としてお金の動きがわからないということがあってはなりません。
それは管理者の資質にも引っかかりますので、しっかり勉強しておきましょう。
介護保険制度での請求業務や医療保険での請求業務では細かいところが違ってくるので要注意です。
物品管理
訪問看護で使用する物品は山ほどあります。
血圧計一つにしても、故障や破損していると訪問先で困ります。
また物品が紛失するケースもあります。
紛失してしまうと、再購入しなければならなくなり、余計な経費がかかってしまいます。
そうならないためにも、物品の管理はきちんとしましょう。
外部との連絡調整
病院の地域連携室やケアマネージャー、医師、家族などとも連絡をとることがたくさんあります。
スタッフが直接関わる場合もありますが、窓口を一つにして置くと、連絡の行き違いや漏れも必然的になくなってきます。
スタッフから情報をもらい、集約して外部と連携を取っていくことで営業にもなり、顧客が増加していきます。

また顔が見える関係になることも大切なので、可能な場合には先方まで足を運んでみましょう。
訪問看護師の管理者になるときの注意点

最後に管理者になるときの注意点について説明していきます。
管理者になりたくてなった方は大丈夫ですが、組織の意向で仕方なくなる場合もあります。
そのような方はしっかりと考えましょう。
- 自分のライフスタイルに合うのか
- 本当にしたかった看護が管理職になることで現場を離れてできなくならないか
- 経営やリーダーシップなど興味もないのに勉強しなくてはならないが大丈夫か
など挙げればキリがありません。
また、なりたくてなった方も、
- きちんと管理職として自分を律することができるか
- 自分の家族に迷惑がかからないか
- 管理職になって何がしたいのかが明確か
など、管理職になってからのビジョンをきちんと持つことが大切です。
事業所によっては残業が増え、帰宅が遅くなるにもかかわらず、残業代が支払われないこと(労働基準法が適用にならない管理者の場合)もあります。
きちんと経営者と話し合った上で承諾しましょう。
訪問看護師の管理者の年収はどれくらいで資質はなにが必要?訪看の管理者になるためのマニュアルのまとめ

- 管理者の年収は事業所ごとに変わる(手当てが1万円程度のところからそれ以上の場所もある)
- 正看護師か保健師の資格が必要
- 病棟看護師や訪問看護師、所定の訪問指導の経験が必要
- 管理者の資質は管理者になる前から自分で意識して身につけていく必要がある
- スタッフ・利用者・物品・財務管理や外部との連絡調整が管理者の業務
管理者になった場合、リスクを負ってでもやりたい仕事なのかを十分考えた上で、管理職になることを承諾しましょう。
管理職になることは素晴らしく、自身の持っている看護感をみんなで共有し、さらに高めることができるチャンスです。
しかし、それに伴うモチベーション維持し責任も一緒についてきます。
チャレンジして失敗してしまわないように、常に日頃から自分を律して看護をしていきましょう。