
病棟看護師と訪問看護師の違いって何?

ただ病院で看護しているのが病棟看護師で、自宅にいくのが訪問看護師でしょ?
と違いがあやふやな方はたくさんいらっしゃいます。
日本では病院での看護師(病棟看護師)が大きな割合を占めています。
しかし、これからの時代は訪問看護師を増やしていかなければなりません。
そこで今回は、
- 病棟看護師と訪問看護師の違い
- 求められる能力や看護師としての立ち位置
- 連携する部署や人
- 役割や機能の違い
について解説して、現役訪問看護師の私が大切だと思っていることをお伝えしていきます。
ぜひ最後まで読んで、それぞれの役割を知ってくださいね。
病棟看護師と訪問看護師の違い①求められる能力

基本的な看護技術やコミュニケーション力などは病棟での看護でも訪問での看護でも必要です。
しかし病棟看護師、訪問看護師に求められている能力は少しですが違います。
それは
- 病院での看護
- 訪問先(自宅や施設)での看護
で大きく違ってきます。
まずは病棟看護師に求められる能力は
- チームワーク
- 迅速な対応力
- 効率的な動き方
- より専門的な知識
が必要になってきます。
訪問看護師に求められるものは
- 判断力
- 報告、連絡、相談
- 優先順位の考え方
- 広範囲の知識
が必要です。
では解説していきましょう。
病棟看護師は他の看護師や医師、リハビリスタッフなどと常に連携をとって動きます。
一人の独断と偏見で動くとチームワークが乱れてしまいますよ。
でも訪問看護師では常にチームのことを考えていないといけないわけではありません。
必要な他職種との連携は絶対的に必要ですが、病棟ほど直結するわけではありません。
また、病棟では医療度の高い患者さんが入院しています。
病棟看護師はそのような患者さんが看護の対象ですので、迅速な対応を求められます。
しかし訪問看護師が対象とするのは生活している方なので、病棟のように迅速に動く必要はありません。
しっかり観察し、悪化がないことを良しとする世界でもありますので、そのような差が生まれてしまいます。
また、病棟では効率的に動かないと点滴や検査出し、処置やその他の援助など手が回らず帰れません。
訪問看護はどうでしょう。
ケアプランによって時間を決められており、その時間内でケアをします。
もちろん効率は大切ですが、あくまでも利用者さんのペースを見ながら動きますので、効率重視にはなりません。
最後に知識の違いです。
病棟では「整形外科病棟」「脳神経外科病棟」など診療科の専門性で分かれていますので、専門的な知識がより重要になってきます。
訪問看護ではそんなことはありませんよね。
精神科訪問看護は別として、基本的にはどのような疾患でも訪問して看護を提供します。

神経難病だからわからない
婦人科疾患は見たことがないからできない
ということは許されません。

基本的な知識は入れておかないといけないのです。
病棟看護師と訪問看護師の違い②看護師としての立ち位置

病棟看護師と訪問看護師の求められるものが違えば立ち位置も必然的に違ってきます。
病棟看護師は病棟で看護を提供しているので、治療優先で動きます。
しかし、訪問看護師は治療優先になることはほとんどありません。
訪問看護師は利用者のフォロー役、伴走者になります。
病棟看護師の目標は退院です。
訪問看護師の目標は生活の質をアップさせることです。
退院が長引くようなことは病棟看護師はしません。
なので、お菓子を食べてはいけない、勝手に歩いてはいけない、と制約をつけてしまいます。
それに比べて訪問看護師は
- 「少しなら食べてもいい。でもこのぐらいね」
- 「歩いてもいいけど、必ず看護師がいる間だけね」
と制約はつけるものの、なるべく本人が望んでいることを叶えることが多いです。

もちろん、医師への確認は必要となりますがハードルが低いのは訪問看護師の方です。
病棟看護師と訪問看護師の違い③連携する部署、人

連携する部署や人も病棟看護師と訪問看護師では違います。
病棟看護師は
- 同じ病院内の看護師
- リハビリスタッフ
- 医師
などと連絡を取り合って業務を進めていきます。
訪問看護ステーションの場合はどうでしょう。
- 利用者の主治医
- ケアマネージャー
- 家族
- 地域連携室
- 市役所
など様々な職種の方と関わっていきます。
大きく違うのは市役所などの行政とも連携を取る必要があるというところです。
病棟看護師が直接患者のことで行政に確認することはほとんどないです。
特に地域連携室などがある場所ではなおさらありません。
しかし訪問看護師になった場合、介護保険や医療保険など行政が絡んできたり申請するものも多くなります。
そのため、訪問看護師が行政と連絡を取る可能性は大いにあります。
また、訪問看護師は地域のインフォーマル(制度化されているサービスではなく、地域住民やボランティア団体などフォーマルでないもの)な関係の人とは関わることになるでしょう。
訪問看護師の役割や機能から病棟看護師との違い

前項でもお話しした通り、訪問看護師は利用者にとって「伴走者」となります。
一緒に前に進み、止まる時も一緒に止まります。
利用者さんが調子がいいときには応援し、調子が悪くなったときには手を差し伸べることが訪問看護師の役割でしょう。
また、機能面から見ても病棟看護師は治療をすることが主な仕事ですが、訪問看護師は違います。
地域で利用者さんが自分らしい暮らしができるかを考えて実現させるために、オンコールや体調確認などの機能を使ってサポートしていくのです。
病棟看護師と違って訪問看護師にとって大切なこと

基本的な看護の考え方は病棟看護師も訪問看護師も一緒です。
患者さんや利用者さんに寄り添って、看護をすることは大前提ですよね。
その中でも訪問看護師が特に大切なことを解説します。
柔軟性
訪問看護は訪問する看護師によってケアの質が雲泥の差ほど変わります。
中には無理難題を言ってくる利用者さんもいます。
しかし、少しでも可能性があるのであれば、頭をフル回転させて柔軟に提供していくことも必要です。
価値観の共有
訪問看護師は個別で動くため、自身の看護観や他の看護師の看護観と違い出てきます。
そのときに統一したケアが必要になってくるため、他の看護師と
- 生死観
- 金銭感覚
- 清潔の価値観
など共有しておく必要があります。
独自性
訪問して看護を展開していく上で、基本を抑えつつもその利用者にあった看護を提供していく必要があります。
他の人の援助をそのまま継続することも大切かもしれませんが、独自性を加えてさらにいい看護を提供していきましょう。
また独自性があると異変に気づきやすくなります。
なぜ気がつきやすくなるのか。

それは他の人とは違う目線で物事を見るようになるからです。
病棟看護師と訪問看護師の違いは?求められる能力の差や役割、機能と大切なことのまとめ

病棟看護師と訪問看護師の
- 求められる能力
- 看護師としての立ち位置
- 連携する部署や人
- 役割
- 機能からの違い
- 大切にしていること
を解説しました。
訪問看護師は病棟看護師よりも勝るところ、劣るところがあります。
しかしそれが専門性につながっています。
求められる能力は基本的なことが多くあります。
対人関係も変わってきて、価値観などを大切にして仕事をしていくことになります。
病棟看護師も大切な役割を果たしています。
その後のバトンをもらい、人生を共に歩むのが訪問看護師です。
訪問看護師は利用者の人生を伴走することでQOLを向上していく手助けをしていくことが病棟看護師との大きな違いになります。
訪問看護師の魅力に気がついた方は是非、訪問看護師に挑戦してみてはいかがでしょうか。